電力と国家/佐高信

電力と国家 (集英社新書)

電力と国家 (集英社新書)

第二次世界大戦前から戦後にかけての電力業界の再編成。民営を堅持するため国家(或いは官僚)と真っ向から対立し、現在の九電力体勢の根幹を築き上げた松永安左エ門らを中心として独立自尊を貫いて経営責任を全うしようとした先達を描き、国家にべったりと寄りかかる今日の同業界との対比を浮かび上がらせる。
福島原発の事故の責任はいずこにあるかはともかくとして、国家の庇護の下にぬくぬくと過ごしてきた東京電力を見つめる著者の視線は厳しい。ただ、官僚に対する理由なき批判(或いは蔑視)は些か度を過ぎているように感じられてならない。同じ公益事業であるガスや水道の供給者との対比という視点が欠けているのも気になるところ。