2005-05-01から1ヶ月間の記事一覧

高山文彦編著「少年犯罪実名報道」文春新書(2002年) ISBN:4166602616

1998年1月に堺市で起きた19歳の男による通り魔殺人事件。未成年犯罪者の氏名等公表を禁じた少年法第61条に反し、編著者は「新潮45」誌上に実名を明かしたルポルタージュを発表した。なぜ編著者らは氏名公表に踏み切ったのか。損害賠償請求訴訟の流れと判決…

立岩二郎「てりむくり」中公新書(2000年) ISBN:4121015150

銭湯や古寺社などで見かける唐破風=「てりむくり屋根」。反転曲面を用いたデザインの起源と展開を追究し、現代の建築や自然の中にも「てりむくり」を見立てている。本書の後半では大きく飛躍して、曖昧・優柔不断な日本人の精神性をも「てりむくり」である…

竹本浩三「オモロイやつら」文春新書(2002年) ISBN:4166602594

吉本興業などで台本を書いていた著者から見た関西芸人の素顔を活写した本。名前しか知らない人、芸風の大きく変わった人、その他にもテレビの画面を通じてしか見ていない芸人の知られざる日常を描いている。 紹介された芸人をもっとよく知っていたら、ワタク…

清水義範「銅像めぐり旅」祥伝社(2002年) ISBN:4396632037

日本各地に建つ銅像を訪れ、その街の風物や人物との関わりを多角的に描いた紀行文。何気なく街に佇む銅像だが、それが建てられるからには歴史的・政治的・人情的必然性がある。著者お得意のひねりのある文章はもちろんのこと、人物観察の巧みさもあって興味…

香山リカ「〈私〉の愛国心」ちくま新書(2004年) ISBN:4480061851

頻発する若者の凶悪犯罪と「心」の問題を精神科医としての立場から分析し、イラクへの自衛隊派遣など対米追従を続ける政治家や病める大国・アメリカ合衆国の思想的現状にも触れて、他者を意識することができず自分の内側にのみ関心を払う人間が増えているこ…

宮脇昭「いのちを守るドングリの森」集英社新書(2005年) ISBN:4087202771

世界各地の植生研究を通じ、身近な自然を守っていくことの意義を説き、具体的な実践法までを紹介している。著者は自身の研究理論に基づく植林活動を実際に行っており、各地で郷土の森を甦らせている。こうした実証成果はもっと喧伝されてしかるべきであろう。…

曽田英夫「幻の時刻表」光文社新書(2005年) ISBN:4334032907

戦前の古い時刻表を下敷きに、日欧連絡列車や旧本線、廃止済みの盲腸線などをたどる机上旅行本(一部に実際の知見あり)。こうした本の特性からか、どうしても著者の蘊蓄話が多くなりがちなのは止むなしか。

高木健一「今なぜ戦後補償か」講談社現代新書(2001年) ISBN:406149578X

第二次世界大戦時に日本軍が展開したアジア・太平洋地域において、暴行・略奪・徴用などで不当な被害を受けた人が多数いた。彼らに対する日本国政府のこれまでの対応と、補償のあるべき姿について、ドイツや米国などの例もひきつつ論述している。戦後60年、…

高谷好一「多文明世界の構図」中公新書(1997年) ISBN:4121013395

「世界観を共有するところ」としての『世界単位』という概念を用い、ポスト・モダンにおける地球世界のあり方、進むべき方向性を提示している。地域研究を長く続けてきた著者ならではの地誌的分析が解りやすい。今西進化論を引き合いに出しつつ、「自然の動…

斎藤駿「なぜ通販で買うのですか」集英社新書(2004年) ISBN:4087202380

雑誌『通販生活』出版元の代表取締役である著者が、通信販売にまつわる様々な技術手法やその裏に横たわる販売哲学まで、体験談的に語った本。有料の型録雑誌でありながら多くの読者を持ち、商品売り上げも伸ばしている理由の一端が覗ける。 ワタクシは古い型…

佐々木信夫「東京都政」岩波新書(2003年) ISBN:4004308259

政治的・社会的に全国の注目を集めている「東京都」の行政。知事の権力や「官僚」、議会などを分析し、財政再建など多くの政策課題にいかに取り組むべきかを論じている。 地方自治という観点からだけでは捉えきれない首都・東京。住民としても、もっと関心を…

清水義範「日本語の乱れ」集英社(2000年) ISBN:4087744981

「日本語」を題材にした12の短編小説集。言葉の乱れ、うわさ話の伝播から人称代名詞、小説の題名、国語学習の手引き、果ては名古屋人を茶化すお話しまで、著者お得意のウィットに富んだ構成で楽しませてくれる。 表題作の中で「(配線を)『繋げる』は誤り」…

加藤理「〈古都〉鎌倉案内」洋泉社(2002年) ISBN:4896916654

今でこそ観光名所として取り上げられる鎌倉だが、武士の都として一瞬の光芒を放った後はひっそりとした寒村になっていた。明治以降に再び脚光を浴びるようになったこの街を、様々な角度から紹介している。私たちが鎌倉の歴史と伝統として認識する事物が意外…

小林公夫「論理思考の鍛え方」講談社現代新書(2004年) ISBN:4061497294

小学校・中学校・東大入試や国家公務員・ロースクール・医師国家試験の事例を元に、仕事をする上で必要とされる思考の能力について検討を加えた本。事例として収録された問題を解くだけでも「頭の体操」的楽しさがある....などという単純な思考ではダメなの…

柘植久慶「21世紀サバイバル・バイブル」集英社文庫(2004年) ISBN:4087477614

日常生活の身の回りから海外渡航先における事故・事件・災害などをいかに回避し、またそれらに遭遇してしまった際にどのように対応すべきか、具体的な提案を満載した本。中には「まさかそこまで……」と思うものもないわけではないが、「備えあれば憂いなし」…