2006-01-01から1年間の記事一覧

里中哲彦「まともな男になりたい」ちくま新書(2006年) ISBN:4480062947

本書の章名に従っていけば、自らのみっともなさを自覚し、教養を身につけ、恥を知り、俗物性を手なずけ、寡欲の心をもち、平衡感覚を生きることが「まともな男」の条件なのだという。凡人にはなかなか難しい所業である。(カタカナ語を極力排し漢語表現に拘…

三井洋司「不老不死のサイエンス」新潮新書(2006年) ISBN:4106101599

主に遺伝子研究の見地から「老化」と「寿命」の仕組みを解き明かした本。「次章で説明します」のような表現が頻発するのはもどかしいが、個々の説明は平易でわかりやすい。ホルモンやサプリメントによる「アンチエイジング」をばっさりと切り捨てるあたり、…

中西隆紀「幻の東京赤煉瓦駅」平凡社新書(2006年) ISBN:4582853374

東京駅・新橋駅・万世橋駅の赤煉瓦駅舎や高架橋にまつわる挿話をいくつも集め、明治大正期の鉄道発展期に於ける首都東京の鉄道事情とそこに関わった人々の思いや営みを立体的に描いている。 影も形もなくなった(旧)新橋駅。万世橋駅は交通博物館としての役…

川本敏「悪質商法を撃退する」岩波アクティブ新書(2003年) ISBN:400700093X

訪問販売、キャッチセールス、アポ商法、架空請求、マルチ商法…法の網をかいくぐり、身近にはびこる悪質商法。その実例と具体的な対応法をわかりやすくまとめている他、行政に望まれる規制についても述べている。新書として書店に並んでいるが、消費者教育の…

黄民基「唯今戦争始め候。明治十年のスクープ合戦」洋泉社新書(2006年) ISBN:4862480683

明治初期の新聞は専ら論説を取り上げるものであったが、西南戦争の従軍記事はそれを覆す威力を持っていた。当時の有力紙の状況と記者の行動から、当時のマスコミの実態とその変容していく様を活写した本。漢語を多く用いた名調子の文章は講談を聞くかの如く…

吉見俊哉「万博幻想」ちくま新書(2005年) ISBN:4480062262

大阪万博の予想外の人気により、日本の政府・自治体・企業に根付いてしまった「万博幻想」。つまりは開催を口実にした開発行為に他ならず、市民参加や国際交流はお題目として飾られるだけで顧みられることがなかった。大阪・沖縄・つくばの各万博における構…

勢古浩爾「ああ、自己嫌悪」PHP新書(2005年) ISBN:4569645321

自分で自分が気に入らない自己嫌悪。しかし「自分以外はみんなバカ」と考える「自分様」よりよほど人間的な魅力に溢れている。自己嫌悪は言わば人間の証なのだ…と、多数の文学や評論、統計調査、そして自らの経験をもとに、著者は自己嫌悪を肯定的にとらえて…

平田オリザ「芸術立国論」集英社新書(2001年) ISBN:4087201120

工業立国、技術立国の時代は終わった。これからは芸術立国の時代である……そう唱える著者による、芸術文化支援のための方策あれこれ。各地の箱もの行政の陰にあって、地域の芸術文化行政は貧困である。中でも音楽・美術に比べ演劇の地位が低いことは間違いな…

是経啓助「都会のお葬式」生活人新書(2002年) ISBN:4140880457

無宗教だと公言しながらも、こと葬儀となると仏式を選ぶ人が大半だという日本の現状を踏まえ、「葬送の自由」を前提に、今日の葬儀から埋葬に至る各事情の問題点からあるべき姿までを考察した本。いざ葬儀という段になると、遺族に心の余裕はなく、また時間…

織田淳太郎「コーチ論」光文社新書(2002年) ISBN:4334031757

スポーツ選手の記録・成績向上に寄与するコーチ。しかしコーチの誤った適切でない指導により可能性を失った選手も数知れないという。本書は主に指導の成功事例を元に、あるべき姿を模索している。「名選手、名監督ならず」とはよく言われるが、コーチも同様…

原田泰「デフレはなぜ怖いのか」文春新書(2004年) ISBN:4166604074

相変わらず続く経済状況の低迷はデフレがもたらしたものであり、そのデフレの元凶は構造的なものではなくマネーサプライの縮小にある……。デフレの仕組みと対処法について、経済理論と過去の分析をもとに明快に解き明かしてくれる本。著者によれば、デフレの…

養老孟司「無思想の発見」ちくま新書(2005年) ISBN:4480062807

概念世界と感覚世界、思想と現実、その両者のつながりが言葉である。日本の歴史と風土によって産み出された「無思想」という思想があることを前提に、身近な個人の問題から国家間の歴史認識のズレまでを如何に考えていくべきかを思索し、それらは般若心経の…

小川裕夫編著「日本全国路面電車の旅」平凡社新書(2005年) ISBN:4582852750

かつては「自動車運行の妨げになる」として撤去され続けてきた路面電車。しかし今、環境に与える負荷が小さくバリアフリーにも貢献するとして見直しの気運が高まっている。各地で新型車の投入が行われたり、路線の延長・新設も検討されているという。札幌か…

リリー・フランキー「東京タワー」扶桑社(2005年) ISBN:4594049664

多芸多才な著者の自伝的小説。訳あって母子家庭同然の暮らしをした少年時代、そして一人暮らしをはじめた高校生以降も、「ボク」は常に「オカン」の有形無形の庇護の下にいた。そこに一定の距離を置きつつ時折絡む「オトン」。不器用で一風変わっているけれ…

広瀬立成「空海とアインシュタイン」PHP新書(2006年) ISBN:4569647820

真言密教を確立した空海と相対性理論を打ち立てたアインシュタイン。二人が21世紀の世界を見たらどんな対話をするだろうか。両者の生涯をたどり、科学と宗教双方の世界観・宇宙観を融合させ、消費社会の弊害を乗り越えたあるべき社会の姿を描き出そうとした…

岩井保「旬の魚はなぜうまい」岩波新書(2002年) ISBN:4004308054

日本人の食生活に馴染みのある魚類を題材に、体組織・回遊の仕組み・口と消化器の構造・生殖等、身体的特徴から生態まで広汎な知識をわかりやすく解説している。食卓に上る魚たちの意外な生態に驚かされると共に、「旬」を見極めてちょうど食べ頃に捕獲して…

大江秀房「科学史から消された女性たち」講談社ブルーバックス(2005年) ISBN:4062575027

ノーベル賞受賞に匹敵する研究業績を上げながら、惜しくもそれを逃した女性研究者たち。性差という壁に妨げられつつも一途に研究・実験・理論構築に邁進し、ものごとの心理を究明しようとした彼女たちの姿は立派なものであったという。 そんな伝記的記述ばか…

長山靖生「『人間嫌い』の言い分」光文社新書(2004年) ISBN:4334032737

「人間嫌い」とはいささか刺激的な題名だが、要は自己の信念をしっかり持って周囲に迎合せず、確固たる生き方をする人のことであると著者はいう。そして、集団内の人間関係に依存し安住してしまう「つるみ系」が世に跋扈しているのを憂い嘆いている。友達づ…

高橋呉郎「週刊誌風雲録」文春新書(2006年) ISBN:4166604864

第二次世界大戦後に勃興した日本の週刊誌。日刊新聞と月刊雑誌の狭間を埋めるように生まれた週刊誌は、その黎明期には新聞社系が、そして次第に出版社系が市場の上位を占めるようになってきた。編集者と執筆者たちの苦悶と活躍を活写し、各紙の栄枯盛衰の道…

広瀬弘忠「無防備な日本人」ちくま新書(2006年) ISBN:4480062831

テロ、自然災害、新型流行病…等々、多種多様な危険に取り囲まれている私たち。著者は多数の事例から日本人のリスク意識や対応能力を検証し、リスクを如何に知り、どのように対処すべきかを提案している。「リスクとうまくつき合うためにはリスクに対する恐怖…

植村峻「贋札の世界史」生活人新書(2004年) ISBN:4140881119

紙幣の誕生、それは贋札の誕生でもあった。中国、イギリス、アメリカなどにおける贋札づくりの歴史を振り返り、今日の贋札防止技術へとつながっていることを明らかにしている。今なお(時々だが)旧札も流通しているが、見比べてみると「なるほど」と思わさ…

築山節「フリーズする脳」生活人新書(2005年) ISBN:4140881631

悪い生活習慣の積み重ねや脳の偏った使い方により高次脳機能が低下してしまい、的確な判断が下せなくなる……著者はこれをパソコンの『フリーズ』になぞらえ、ボケ症状の入り口段階であると警告する。本書ではフリーズしてしまった様々な事例・症例とその対応…

遠藤秀紀「人体 失敗の進化史」光文社新書(2006年) ISBN:433403358X

動物5億年の進化の過程は「設計変更」の連続であった……ヒトと動物の身体の歴史をたどり、骨格や臓器、感覚器、手足、脳などがどのように進化を遂げてきたかを述べている。適者生存とは言うが、結果的に当初の役割が損なわれて全く別の機能を持つようになっ…

原田多加司「職人暮らし」ちくま新書(2005年) ISBN:4480062599

現役檜皮葺職人の親方である著者が自ら語る『職人』の日常。普段の生活、技術の取得と承継、後進の育成、意識のありようなどが忌憚なく語り尽くされている。「頑固一徹」などというステレオタイプの職人像は必ずしも実態を現してはいないようだ。分業化が進…

養老孟司「まともな人」中公新書(2003年) ISBN:4121017196

著者による時評随筆。今作は2001年から2003年にかけてのものがまとめられている。この時期といえば「9・11」であり、本書全体を通じてこの事件をどう考えるべきなのかが問いかけられているようだ。

齋藤滋「よく噛んで食べる」生活人新書(2005年) ISBN:4140881569

著者によれば、よく噛んで食べることにより、肥満や視力低下、脳の老化など各種障害の防止に効果期待できる。ストレス対抗力もつけることができるという。さらに唾液の効能にも触れ、噛むことが如何に心身の健康作りに寄与するかを縷々述べている。そのため…

山元大輔「心と遺伝子」中公新書ラクレ(2006年) ISBN:4121502132

浮気、食欲、母性愛、睡眠、同性愛など身近(?)な心理と行動の裏側に潜む遺伝子の影響を、動物実験などの知見から明らかにしている。「愛」とはヒト固有の高度な精神的事象だと思っていたが、その原理的部分は進化の過程で体得してきたものなのだろう。と…

田島正樹「読む哲学事典」講談社現代新書(2006年) ISBN:4061498398

愛と暴力、運と偶然、知識と信念など対立する概念を取り上げて、それぞれの連関を浮き彫りにしようとした一冊。そもそも「事典」は「読む」ものなのか、という議論もしたくなるが、悲しきことに形而上学的思考能力の乏しいワタクシには無謀な挑戦になりそう…

最相葉月「いのち」文春新書(2005年) ISBN:4166604740

クローン羊「ドリー」の誕生が大きく報じられてから9年。生命科学は如何なる道をたどり、この先どこへ歩もうとしているのか、そしてその倫理的指針はどうなっているのか。著者と哲学者・発生生物学者・遺伝病患者支援者・宗教学者など12人との対話により、…

香山リカ、森健「ネット王子とケータイ姫」中公新書ラクレ(2004年) ISBN:4121501551

ネットやケータイにはまる若者の心理に関する香山氏の分析と、森氏によるいくつかの実態報告。それを踏まえて親や子はそれぞれどのように対応していけばよいのかという提言をまとめた構成になっている。しかしながら、「少女たちは自己への不安から関係性を…