勢古浩爾「ああ、自己嫌悪」PHP新書(2005年) ISBN:4569645321

 自分で自分が気に入らない自己嫌悪。しかし「自分以外はみんなバカ」と考える「自分様」よりよほど人間的な魅力に溢れている。自己嫌悪は言わば人間の証なのだ…と、多数の文学や評論、統計調査、そして自らの経験をもとに、著者は自己嫌悪を肯定的にとらえている。もちろん免罪符として逃げ込むことに釘を刺すことも忘れてはいない。そして終章に至り、著者は心を強くして無理をせずあるがままに生きていくことを提唱する(つまりは「自己嫌悪」論は壮大な前ふりだったと読者は此処に至り初めて気づかされるのだ)。著者の悪ぶったテンポよい文体に乗せられて一気に読み終えてしまったが、再読するとまた別の味わいも感じられる一冊でありました。