吉見俊哉「万博幻想」ちくま新書(2005年) ISBN:4480062262

 大阪万博の予想外の人気により、日本の政府・自治体・企業に根付いてしまった「万博幻想」。つまりは開催を口実にした開発行為に他ならず、市民参加や国際交流はお題目として飾られるだけで顧みられることがなかった。大阪・沖縄・つくばの各万博における構想から開催実態までを踏まえたうえで、愛知万博におけるそれらの共通性と変化を余儀なくされた市民との関わりについて、開催に大きく関与した著者ならではの分析により明らかにされている。
 本書は「愛・地球博」開幕直前の上梓。予想を遙かに上回る動員があったものの、結局は20世紀の博覧会と何ら変わるところのない電気仕掛けに国民の評判が集まったことを著者はどのようにとらえているのだろうか。