2005-08-01から1ヶ月間の記事一覧

大塚英志「『伝統』とは何か」ちくま新書(2004年) ISBN:4480061967

近代の日本において「伝統」はいかに作られてきたか。社会=国家体制の求めに応じ、「伝統」という装いのもとに支配者に都合の良い制度・しきたりが形成される様を、柳田国男らによる民俗学の視座の変化によって浮かび上がらせている。 何年続けば「伝統」と…

高橋久仁子「『食べ物神話』の落とし穴」講談社ブルーバックス(2003年) ISBN:4062574187

巷に溢れる食と健康に関する情報。著者によると、その中には信憑性に乏しいものも多数見受けられるという。本書では栄養に関する知識を整理すると共に、食にまつわる「噂」や痩身に関する情報などを検証し、商品宣伝・表示についても問題点を指摘している。…

牧秀彦「名刀 その由来と伝説」光文社新書(2005年) ISBN:4334033032

古代から近世に至る日本刀50振にまつわる逸話集。実際の戦闘道具としてより、権威の象徴として扱われることの多かった歴史がよく分かる。書名のとおり「伝説」が多いのは、その権威付けの裏返しでもあるのだろう。巻末に日本刀に関する詳細な解説が付いてお…

津島祐子「快楽の本棚」中公新書(2003年) ISBN:4121016785

自らの人生と読書遍歴をもとにした東西の名作案内。1歳の時に父・太宰治を亡くしているので直接的な影響は受けていないのだろうが、そのひと味違う自己考察には感服する。我が濫読も精神になにがしかの好作用をもたらしてくれているのだろうか。

黒井克行「男の引き際」新潮社新書(2004年) ISBN:4106100746

いつかは誰にでも訪れる「引退」「退職」の日。表舞台から退いた人々のさまざまな事例を元に、晩節を汚さぬ引き際とはいかなるものかを考察している。本文中で紹介している中では、特に本田宗一郎氏と藤沢武夫氏のやりとりに心を打たれた。 「終わりよければ…

井上薫「司法のしゃべりすぎ」新潮社新書 (2005年) ISBN:4106101033

裁判の判決文に記された「理由」には多くの蛇足が含まれている。これが裁判の本筋とは関係なく一人歩きし、当事者に新たな被害を及ぼし、手続きや作業の面で無駄を生んでいる……これまで気づかれなかった裁判と判決文の実態を、現役判事が多くの実例を元に鋭…

久保田淳「富士山の文学」文春新書(2004年) ISBN:416660404X

太古の昔から日本人を魅了して止まない霊峰・富士。古代から近現代に至る文学の中で、富士山がどのように描かれてきたのかを丹念に拾い集めたアンソロジー。富士を尊く崇める人、敢えて低める人など、いずれにせよ富士山は文人墨客の精神に大きな影響を与え…

道方しのぶ「日本人のルーツ探索マップ」平凡社新書(2005年) ISBN:4582852610

日本人はどこから来たのか。出土した人骨や遺物、遺跡などに基づいて、旧石器・縄文・弥生の各時代毎に、渡来人の出発地を大陸・韓半島・南洋諸島などと分析している。そして、そのたび毎に混血が進み、現在の「日本人」が形成されていったとしている。 身の…

松井政就「賭けに勝つ人嵌る人」集英社新書(2002年) ISBN:408720135X

ラスベガスで楽しく過ごすにはカジノが一番! 著者の経験的カジノガイドである。カジノがない日本の人々は「金はあるがskillはない」と揶揄されているという。そうした傾向がビジネスなどにも反映して、何事にも慎重を期すあまり、ここぞという勝負時を逃し…

向一陽「日本 川紀行」中公新書(2003年) ISBN:412101698X

日本の5つの大河川の源流から河口までをたどり、流域の自然と開発、人々の営みなどを様々な角度から見つめた一冊。かつては川と共生していた人間が、経済活動優先のために川を痛めつけている状況は全国共通の現象である。その一方で、川を再生し日々の生活…

伊東孝「日本の近代化遺産」岩波新書(2000年) ISBN:4004306957

日本各地に残る土木遺産・産業遺産の現状を訪ね、保存と活用の意義を訴える。古寺仏閣などと異なり、近代建築・機構は不要になれば撤去・解体されるのが日本の常。こうした発想を改め、地域の活性化にも役立てていこうとする理念はよく分かる。ただ、維持管…

義江明子「つくられた卑弥呼」ちくま新書(2005年) ISBN:4480062289

魏志倭人伝や他の史料を詳細に読み直すことにより、全く新しい女王「卑弥呼」像を描き出している。著者によれば、神秘的巫女としての卑弥呼という姿は明治時代の創作であり、実態は戦の先頭にも立っていた実力者であったという。今後この時期の新たな史料は…

菅野廣一「食とこころ」学建書院(1991年) ISBN:4762408395

乳幼児期の食生活について、栄養や生理、心理などの面から多角的に解説している。多くの実践的助言が平易な表現で盛り込まれており、乳幼児を持つ親はもとより将来の母親・父親候補も一読しておくべき一冊だと思う。