2004-01-01から1年間の記事一覧
切手を始めとする郵便物を通じ世相を分析する「郵便学」の一冊。前半は切手に描かれた怪しげな日本の姿(人物や風俗など)を紹介し、後半は戦前の日本が関わった「海外」切手の裏事情について述べている。 切手収集を楽しんでいた頃を思い出して懐かしくなり…
佐渡に伝わる史料をもとに、江戸時代の医療の実態を明らかにしている。時代劇などでは貧窮にあえぐ庶民がまともな治療も受けられずに死んでいく場面がよく登場するが、実際には多数の医者がいて薬草学も盛んであり、庶民がごく普通に治療を受けていた様子が…
「私」とは何かという哲学的問いかけに「身体」という面から接近を試みた一冊。読み進んでいくうちに「身体として・いる」というテーゼが良く理解できた。 売春する理由から臓器移植の考え方まで、知的考察としては興味深いものであった。
豪華な音楽堂の象徴的存在であるパイプオルガン。その導入から運用に至るまでの背後に渦巻く政治的要素をあぶり出す好著。公共ホールの設置物でありながら市民に開放されていないオルガンが大多数であることに驚かされる。本書ではオルガンをホールの飾りに…
日本経団連が唱える社会・経済の改革提案。スッと一読すると「成る程」と思わされるところもあったが、よくよく見れば(あたりまえだが)企業側の論理が一貫しているのだった。
日米欧における自動販売機の発達と現状を総括し、果ては自動販売機が環境や社会に与える影響までを分析している。ふだん何の気なしに利用している街中の自動販売機。その存在が当たり前なのは日本だけだという。 両替機やパーキングメーターまでが自動販売機…
古代から遣唐使に至るまでの日本と中国の関わりについて、文献・資料に大胆な解釈を与え描き出した本である。書名に挙げるほど地図は多くない。 その独自の見解は興味深いものであるが....。
特別天然記念物に指定されているニホンカモシカに関する概説書。分類学的見地や生態、そして「食害」に至るまで、読み終える頃にはカモシカ通になれそう。 『カモシカのような脚』が褒め言葉でないことは、あまり知られていないのだろうか・・・・。
航空機の旅における物的・人的サービスについて、その歴史と現状を網羅的に紹介している。 機内設備や客室乗務員、果ては塗装に至るまでマニア的視点を随所に感じられる。数年に渡り年間搭乗回数が50回を超えた私としても、いろいろ楽しめる内容だった。ま…
韓国駐在経験の長い著者が肌で感じた韓国の人々の様子を紹介した本。導入部で我々が彼の国の人に抱いている先入観的印象を列挙し、読み進める内にそれらの当否が解る、という構成がおもしろい。政治思想の違いや南北統一に関する論考にも興味を引かれた。 本…
ヨーロッパを中心に、20世紀前半の政治を席巻したファシストを紹介した本。 人名と出来事の羅列は、まるで歴史の教科書のようでした。
精神科の臨床医を長年続ける著者が、その豊富な臨床例をもとに「こころ」の障害を取り上げている。 元々が連載記事であるため、ほぼ均一の分量で章が改められ、内容の重複もかなりある。読みやすさという点からは、もう少し編集に工夫があっても良いのでは。
駐車禁止にネズミ取り、交通事故....。身近でありながら守られていない道路交通法について、その条文解釈から運用の仕方に至るまで解説した本。交通関係の弁護士である著者の視点は明快で、内容的にもわかりやすく整理されていた。事故の時の心構えや、各章…
中東を中心に、イスラム教の影響下にある女性の姿を様々な切り口で紹介している。シバの女王などの歴史的叙述から現代のサウジ王室事情に至るまで、コーラン及びハディースを引用しつつ幅広い視点で捉えている。 本筋とは別に、トルコの街並みとそこを歩く人…
旧街道や廃線跡、古代官道などをずんずん歩いていく著者お得意の紀行文。各編毎に二万五千分の一地形図が添えられており、臨場感を盛り上げてくれる。訪問時期が明記されているのも配慮が行き届いている。 かなりの高齢にもかかわらず、その健脚ぶりには恐れ…
ネパールから雲南と、コメを常食する民族を訪ねた調査記録。各民族の歴史と環境に応じたコメ食の様子がうかがえる。ただ、著者の文化に対する評価や、かの地の政府に対するおもねりのようなものが見え隠れするのはあまりよい印象を受けなかった。 この本が書…
美と芸術と感性に関する哲学である「美学」について、第一人者である著者が様々な実例とその解釈を元に解説してくれている。用語の難しさを乗り越えて、その一端を覗くことができた。 神の存在と美の関係など、思索の道は果てしない。門外漢のワタクシでも、…
縦書き・横書き自在の日本語。これは世界でも希有の言語なのだとか。江戸時代末期に横書きが導入されて以降、現在の左横書きが主流として定着するまでの動きについて、豊富な資料を基に分析している。 「右横書きは伝統的なもの」というのが誤った認識である…
環境衛生監視員としての体験を元に、水道・結露・ダニ・プール・銭湯など身の回りの「水」についてのあれこれをまとめた本。知っておいて損はない内容であった。 とはいえ、冒頭の体験談は同じような内容の繰り返し、なんだかくどさを感じてしまった。
2003年6月いつの間にか成立していた有事法制について、日本国憲法の平和主義や基本的人権尊重の立場から厳しく分析した本。一読して、「有事法制」の問題点の多さに驚かされた。 最終章で「有事法制」が発動される場面のシミュレーションがなされている。こ…
耐震設計を初めとして、建築物に係る構造設計の基礎知識について平易に解説してくれている。一部難解なところもあったが、図表の入れ方が過不足なく理解の手助けになった。現存の建物の紹介がもう少し多ければ、もっと楽しい読み物になっただろう。 建物を見…
多数の練習問題を交え、理論と実践で社会人に必要な文章力をつけさせようとする本。 中学生のころ文法が得意だった私としては、もっと掘り下げた内容を期待していたのだが....。いささかもの足りなさを感じてしまった。 「耳触り」(同書p210)という表現は…
淡水魚・海水魚を問わず、魚に関するよろず知識を100集めたコラム集。興味の赴くままに、どこからでも読み進めることができる気の張らない読み物であった。魚屋や水族館に行くのが楽しくなる本です。