2005-06-01から1ヶ月間の記事一覧

山脇直司「公共哲学とは何か」ちくま新書(2004年) ISBN:448006169X

前世紀の「滅私奉公」とその反動である「滅公奉私」。その双方を乗り越えた「活私開公」という理念のもと、他者の尊厳を媒介として、個人の尊厳と公共性を両立させる公共哲学が成立するとしている。なかなか理解の難しい学問分野であるが、皆が心得ておくべ…

平田剛士「そしてウンコは空のかなたへ」金曜日(2004年) ISBN:490660501X

衣食住、エネルギー、排泄物……。日々暮らしていく中で必然的に発生させてしまう廃棄物が、いかに処理されているのかをレポートしている。巷では「リサイクル」という言葉が金科玉条の如く用いられているが、その実情は甚だ心許ないことがよく分かる。私たち…

北沢方邦「古事記の宇宙論」平凡社新書(2004年) ISBN:4582852483

古事記の現代語訳に解説を添え、神話に込められた当時の人々の宇宙観・自然観を焙り出そうとした一冊。日本の神話は「皇国史観」を彩る役割をさせられたこともあってか、どうにもうさんくささを拭いきれない。著者の論理展開の依拠するところはそれと異なっ…

秋庭俊「帝都東京・地下の謎86」洋泉社(2005年) ISBN:4896918886

第二次世界大戦前の帝都・東京には秘密の地下鉄・地下道が多数存在した……という著者の、同趣旨の本の3冊目。地図、史料、関係者の証言などと大胆な推測を組み合わせ、興味深い結論を導き出している。「なるほど」と思うものもあれば、些か強引な論の展開の…

小林弦彦「旧暦はくらしの羅針盤」生活人新書(2002年) ISBN:4140880546

1872年に廃された旧暦=太陰太陽暦を見直そうと提唱する本。六曜をばかばかしいものとして 切り捨てる部分はお見事。二十四節気など季節感あふれる事象についての解説は勉強になる。旧暦の閏月により季節を補正すれば「異常気象」を説明できるとする部分に関…

三杉隆敏「真贋ものがたり」岩波新書(1996年) ISBN:4004304512

中国陶磁器研究家である著者が「真贋」にまつわる人間と社会の諸様相をまとめた一冊。読み進むうちに、美術とのつき合い方に関する心得というものが浮かび上がってくる。末章に書かれた「それではいったい何をもって『美』と呼ぶのか、何をもって人間の芸術…

野口武彦「忠臣蔵」ちくま新書(1994年) ISBN:4480056149

年末の恒例行事とも言えそうな「忠臣蔵」はドラマ化の過程で様々な脚色が施されている。本所では典拠を著者の信頼の置ける資料に絞り、「松の廊下」から決着に至るまでの各過程で何が起こったのか、その実像に迫っている。討ち入り直前に脱落した「非義士」…

坂田豊光「欧州通貨統合のゆくえ」中公新書(2005年) ISBN:4121017803

ユーロの成立に至る時代背景と、それを支える経済情勢、拡大するEUと今後の行く末などを分析した本。長く続く不況に落ち込んでいる日本に比べユーロ経済圏は安定した成長を続けているが、国家間の思惑の違いから実は様々な問題を内包していることが見て取れ…

椎名誠「にっぽん海風魚旅」講談社(2000年) ISBN:4062102811

日本の海辺を行き、波を見つめ人と語らい産物を食らう。そんな著者お得意の行き当たりばったり的な紀行文。読み進むうちに、読者は旅人の立場から地元民の視点をも得ることができる。 きれいな海を日がな一日眺めていたら、きっと幸せになれると思う。

佐藤しんり「光触媒とはなにか」講談社ブルーバックス(2004年) ISBN:406257456X

巷で話題になっている光触媒。実は誤った理論の解説がとても多いのだと指摘する、研究先駆者の著者による詳細な紹介本。内容的にかなり高度で、化学に相当関心が強くないと理解するのは困難かも知れません。 一番身近な光触媒は「植物による光合成」だそうな…

田中克彦「名前と人間」岩波新書(1996年) ISBN:4004304725

言語学における固有名詞の扱いから始まって、固有名詞のうち主に人名にまつわる諸考察を論じている。日々の会話は固有名詞無しでは成り立たないが、固有名詞が単なる「記号」でもないことは当然である。名前の裏に込められた思いを(無意識下においてかもし…

田中秀一「『コレステロール常識』ウソ・ホント」講談社ブルーバックス(2005年) ISBN:4062574659

「コレステロール値は低いほど良い」という巷に流布している「常識」を検証し、現代の日本人では「むしろコレステロール値を上げるべき」という結論に達している。著者は医療ジャーナリスト。論考の中ではもちろん医師の見解を多数引いているが、著者自身の…

山口仲美「平安朝”元気印”列伝」丸善ライブラリー(1992年) ISBN:4621050699

今昔物語集に収録された説話の中から選り抜かれた面白話を著者と共に読み進むうちに、平安時代のたくましい女性と愚かな男たちの暮らしぶりが眼前に浮かんでくる。原文の息づかいを損なわない著者の要約がお見事です。 こういった書物がテキストならば、高校…

小口幸伸「外為市場血風録」集英社新書(2003年) ISBN:4087201775

70年代後半から外国為替のディーラーとして活動していた著者による実録。外為市場の表と裏、通貨危機の実態など、「事実は小説よりも奇なり」を地でいく波瀾万丈のドラマが楽しめる。また、要所に盛り込まれたコラムにより、外為市場の仕組みを理解できるよ…

勢古浩爾「まれに見るバカ」洋泉社(2002年) ISBN:4896916018

「わたしはバカはきらいである」という刺激的な書き出しで始まる一冊。著者の基準で「バカ」と認定された知識人から市井の人々まで、「バカ」の実態を余すところなく伝えている。世の中には周りの見えていない自分本位の「バカ」がいかに溢れているか、著者…