田中克彦「名前と人間」岩波新書(1996年) ISBN:4004304725

 言語学における固有名詞の扱いから始まって、固有名詞のうち主に人名にまつわる諸考察を論じている。日々の会話は固有名詞無しでは成り立たないが、固有名詞が単なる「記号」でもないことは当然である。名前の裏に込められた思いを(無意識下においてかもしれないが)勝手に想像しつつ、会話と思考は進んでいくようだ。だから本書の中で「固有名詞は意味をなさない」と指摘され、目から鱗が落ちる思いをした。