2005-07-01から1ヶ月間の記事一覧

林信吾「これでもイギリスが好きですか?」平凡社新書(2003年) ISBN:458285172X

「ゆとりをもった先進国」などとして憧れの対象となっている英国。だがその実情はどうなのか。また、歴史的・政治的に見て、かの国が如何なる所行をしてきたのか。英国で10年間暮らした経験をふまえ、著者は現実に根ざさない偶像崇拝じみた英国(英語)信仰…

青井博幸「ビールの力」洋泉社(2002年) ISBN:4869616476

ビール好きが高じて自ら醸造を手がけるようになった著者によるビールにまつわるあれこれをまとめた本。欧州における「本場」ビールとの出会い、ビールの基礎知識、そして地ビール作りの実践などについて、著者の経験談を中心に盛りだくさんな内容である。酒…

辰濃和男「四国遍路」岩波新書(2001年) ISBN:4004307279

七十歳を目前に、自らの足で四国札所八十八カ所を巡る二度目の遍路の旅に出た著者の道中記。読み進むうちに、行間から光や風、土や時間を感じられるようになり、著者と共にへんろ道を歩んでいる気分を味わえる。 無心に歩く。歩くうちに感じるものを受け入れ…

中村靖彦「牛肉と政治 不安の構図」文春新書(2005年) ISBN:4166604376

先日読了した「狂牛病」の著者による姉妹編とも言うべき一冊。牛肉輸入自由化、表示偽装、輸入解禁の是非など、政治によってもたらされている混乱を指摘し、消費者不在の視点を批判している。過剰な検査・制限は不要だろうが、やはり安全第一の思いは守られ…

夢枕莫・たむらしげる「羊の宇宙」文藝春秋(2005年) ISBN:4163238700

アインシュタイン博士と羊飼いの少年とが宇宙についての問答をするという絵本。真理は簡単なことで、宇宙とは時間と空間と「癖」だという、哲学的かつ科学的な物語である。たむらしげるさんの夢のあるイラストが適宜挿入されることにより、読者に考える間を…

高田明和「40歳をすぎてからの賢い脳のつくり方」講談社α新書(2002年) ISBN:4062721554

「歳をとった」と言うだけで世間的に厳しい視線を浴びる世代に向けて、世に溢れるハウツー本ではあまり触れられていない意識改革を中心に述べた一冊。脳科学と仏教の考え・山岡鉄舟の逸話などを元に、脳内体力を維持向上していく心得を説いている。加齢と共…

日垣隆「現代日本の問題集」講談社現代新書(2004年) ISBN:406149726X

現代日本の政治的・社会的問題を多数指摘し、その背景を探りつつ解決策を模索する一冊。本書における問題意識には共感できるものが多く、特に刑法第39条第2項を廃止せよとの主張は全くそのとおりだと思う。また、現政権の「構造改革」のまやかしについても…

椎名誠「秘密のミャンマー」小学館(2003年) ISBN:4093940452

地球をどかどか歩いてしまう著者のミャンマー紀行。異文化と向き合う著者の姿勢は奢らずおもねらず、対等な視線を貫いている。共に旅をしている感覚を楽しむと同時に、私たちの日々の暮らしが果たして幸せなものなのかどうか、知らず知らずのうちに考えさせ…

中村靖彦「狂牛病」岩波新書(2001年) ISBN:4004307597

イギリスにおける狂牛病の発症と「発見」、そして日本での発症までを追ったドキュメント。本書刊行後、アメリカ合衆国での発症の確認、日本国内での感染の拡大、さらにはBSE由来の変異型ヤコブ病の発生と、事態はより深刻な方向に進んでいる。潜伏期間の長さ…

杉江弘充「知っていそうで知らない台湾」平凡社新書(2001年) ISBN:4582851002

最も近い隣国である台湾で長年特派員を勤めた著者による台湾リポート。政治体制と対中国政策の変遷、対日・対中感情の実状など、様々な角度からの分析を行っている。問題解決は容易ではないだろうが、ゆっくりと妥協点を見いだしていってほしいものである。

吉澤淑「酒の文化誌」丸善ライブラリー(1991年) ISBN:4621050176

日本酒・ビール・ワイン・洋酒の製法に始まって、飲み方・供し方、器、利き酒の方法、料理との相性など、多角的な視点から「酒」とのつき合い方を紹介している。内容の濃い話を平易に説いており、飲み会での軽い話題にも役立てられる。著者の好みは清酒のよ…

大嶽秀夫「日本型ポピュリズム」中公新書(2003年) ISBN:4121017080

1990年代から今世紀初頭までの主に国政の状況を分析し、各政権がどのようにして成立し、また崩れていったのか、その背景にあるポピュリズム的力学により明らかにしている。議院内閣制でありながら所属政党内部との抗争?に明け暮れて改革が遅々として進まな…

石川理夫「温泉法則」集英社新書(2003年) ISBN:4087202151

温泉の本質は源泉にある、そう指摘する著者による「良い温泉の選び方」指南書。温泉に関する基礎知識をとりまとめ、何に注目して温泉を見るべきかを指摘している。本書が書かれたのは白骨温泉などでの入浴剤混和が問題になる前年で、その事実を知っていたら…

中山隆志「日本海・軍事緊張」中公新書ラクレ(2002年) ISBN:4121500601

日本周辺の軍事的緊張を軸に、自衛隊装備の現状と有事への対応、増強の経緯と今後の戦略について説いている。著者は元陸上自衛隊員で防衛大学の教授も務めた人で、現状に対する「制服組」の危機感と苛立ちが伝わってくる。随所に「普通の国」たるべし、とい…

栗田勇「花を旅する」岩波新書(2001年) ISBN:4004307228

季節の花・植物を12選び取り、その名所を訪ね、また万葉集からの古典文学を紐解いて、立体的な花巡りの旅に誘ってくれる本。花の図版は各章1葉しかないが、却ってそれが想像力を高めてくれ、著者と共に見頃となった花々を鑑賞している気分になれる。 時が過…

吉村昭「史実を歩く」文春新書(1998年) ISBN:4166600036

戦史小説・歴史小説の作者が史料から何を読み取り、事件現場で何を感じたか。小説の虚構と事実とをいかに融合し文学たらしめていくか。そんな小説作法を巡る随筆で、著者の歴史と向き合う誠実な人柄も偲ばれる内容となっている。 あまり小説を読まないワタク…