2005-01-01から1年間の記事一覧

相川充「反常識の対人心理学」生活人新書(2001年) ISBN:4140880120

他人と接することなしには日々暮らしていくことができない私たち。本書には人間関係を円滑に進める知識が多数含まれている。とはいえ、この手の書物を何冊か読んだ読者にとっては馴染みのある内容もあるだろう。 本書の中で、血液型と性格は無関係と断じてい…

池内了「天文学者の虫眼鏡」文春新書(1999年) ISBN:4166600605

古今東西の文学と、天文学を始めとする科学とが博識の著者により融合された随筆集。科学・文学それぞれ専門的知識がなくても楽しめるが、知っているとなお楽しめる内容になっている。ある意味、著者との知恵比べと言えるのかも知れない。あとがきで著者自身…

林望「『芸術力』の磨きかた」PHP新書(2003年) ISBN:4569628974

文学者であり様々な芸術を嗜む著者が、音楽・絵画・書・伝統芸能などの「芸術」をもっと身近にするための手法を紹介している。芸術家は受け手(観衆)が育てるということ、基礎的知識を付与した上で個性を活かす教育を施すべきこと、そして何よりも自ら実践…

渡部哲郎「バスクとバスク人」平凡社新書(2004年) ISBN:4582852211

スペイン・フランスにまたがる地域に住むバスク民族の文化、言語、歴史などを辿り、これからの政治的動向を概観した一冊。周囲とのさまざまな相違のうち、言語の違いというのは大きな障壁なのだろう。「民族国家」思想の当否は私には即断できないが、民族的…

鈴木淳一,小林武夫「耳科学」中公新書(2001年) ISBN:4121015983

最新の耳科学の成果に基づいて、難聴の種類と原因、予防策や対応を解説している。難聴は外部からは見えない障害であること、そしてその苦痛は健常者には理解されないこと、また、聴覚により言語を獲得するということを著者に指摘されるまで、私はそうした事…

田中弘「時価会計不況」新潮新書(2003年) ISBN:4106100134

国際会計基準とされる「時価会計」制度を採用することとしたニッポン。しかし、国際基準とは名ばかりで、実質的にこの基準を採用している国はなく、しかも採用することによる損失は多大なものが見込まれるという。基準の不合理さを徹底的に追究する著者の指…

柏井壽「『極み』のひとり旅」光文社新書(2004年) ISBN:4334032702

(主に)男が一人旅を楽しむための基本的知識と、実践編としての紀行文からなっている。 日常生活から解放されることも旅に出る楽しさのひとつ。となれば、「家族」という日頃のしがらみを忘れる一人旅は最高のものなのかも知れない。

石川文洋「日本縦断徒歩の旅」岩波新書(2004年) ISBN:4004308917

2003年7月から150日をかけて、北海道宗谷岬から沖縄県喜屋武岬までの三千余キロを自らの足だけで踏破した65歳の著者。日記体の紀行文で、風景や人々とのふれあいを鮮やかに描き出している。 行間からにじみ出てくる平和に対する著者の思いが力強い。

辻口博啓,浅妻千映子「パティシエ世界一」光文社新書(2002年) ISBN:4334031447

自由が丘の人気洋菓子店「モンサンクレール」辻口店長が語る、ケーキの魅力と修行時代、これからの夢。読んでいるだけですぐにでも食べたくなる、魅惑的な洋菓子が多数紹介されている。語り口調の構成も臨場感があって効果的である。 惜しむらくは朝妻さんの…

目取真俊「沖縄『戦後』ゼロ年」生活人新書(2005年) ISBN:414088150X

沖縄で生まれ育った著者。親族から戦争体験を聴き、今なお県の2割を占める米軍基地を間近に暮らす著者にとっては、沖縄は今なお「戦後ではない」と感じられるという。民間人を巻き込んだ悲惨な地上戦の体験は軍隊の本質を明らかにさせずにはおかない。また…

長部日出雄「仏教と資本主義」新潮新書(2004年) ISBN:4106100630

著者によれば、日本の歴史には奈良時代から江戸時代を通じて、マックス・ウェーバーが近代経済の革新的な原動力であるとした「資本主義の精神」が脈々と流れているという。仏教の先導者の思想と西洋の近代経済学とを連動させるという著者の考えは論理的で明…

香山リカ「ぷちナショナリズム症候群」中公新書ラクレ(2002年) ISBN:4121500628

サッカーの国際試合などで、無邪気かつ熱狂的に「ニッポン」を応援する人々が氾濫している。批判精神も自己の相対化もなく流されていく姿を著者は「ぷちナショナリズム」と呼び、やがて本格的なナショナリズムに傾いていくことに対し危機感を抱いている。ま…

平朝彦,徐垣,末廣潔,木下肇「地球の内部で何が起こっているのか?」光文社新書(2005年) ISBN:4334033148

地球内部の構造に関する最新の研究成果をわかりやすくまとめるとともに、地球深部探査船「ちきゅう」による調査計画と、それが何をもたらすかを解説した本。この分野では日本が世界の先駆的存在であることを初めて知りました。 宇宙よりも足元の地球。ニッポ…

山本善明「日本航空事故処理担当」講談社α新書(2001年) ISBN:4062720647

1994年に退社するまで34年間日本航空で航空事故対応に携わってきた著者による、安全管理への提言書。平時における危機管理体制の確立や、ことが起こった時の対応方法など、航空業界に限らず様々な分野・場面で役立つ示唆に富んでいる。 本書の刊行後も、日本…

田中貴子「日本古典への招待」ちくま新書(1996年) ISBN:4480056904

ややもすると敬遠されがちな古典文学だが、ちょっとした視点の変化で誰もが楽しめるものになる……そのための9つの方法を紹介した新しい古典入門書。能や狂言から近づいたり、食べ物に注目したり、ドラマ化の配役を考えるなど、古典文学を身近にする具体的な…

谷岡一郎「『社会調査』のウソ」文春新書(2000年) ISBN:4166601105

新聞や官公庁の行う社会調査には嘘やまやかしがたくさんある、と指摘する著者による「社会調査」の読み解き方指南書である。調査対象の偏りや質問内容・選択肢による誘導など調査そのものの欠陥、データの解釈や報告手法による曲解など、客観性のあるように…

辰濃和男,村瀬誠「雨を活かす」岩波アクティブ新書(2004年) ISBN:4007001049

限りある水資源を守っていくために、雨水をそのまま下水に放流するのではなく少しでも活用していこうとする雨水リサイクルの思想は重要である。本書では様々な実践例や改善すべき制度・問題点などを取り上げて、雨を活かして自然と共存していく街作りを勧め…

中村明「日本語のコツ」中公新書(2002年) ISBN:412101667X

日本語を正しく美しく使いこなすためのノウハウが満載された本。類義語の使い分けと語感の違い、敬語や手紙の作法、文意を曖昧にしないための表現法等々、知っているとより確実に意思疎通が図れるようになる。また、日本の気候風土とそれを表現した詩歌など…

S.C.モリス「カンブリア紀の怪物たち」講談社現代新書(1997年) ISBN:4061493434

今から5億年前、古生代前期の海には多種多様な生物が生息していた。カナダ・バージェス頁岩での発掘を契機に発見された多数の化石から、奇っ怪な生物たちの生態を想像復元したり、現在地球に生息している生物との関わりを説いている。

NHK放送文化研究会日本語プロジェクト「国語力アップ400問」生活人新書(2003年) ISBN:4140880678

インターネットで出題された400問の国語力常識テストを採録したもの。頁をめくるとすぐに解答があり、正解率も載っているので、余裕のある時間に随時読み進むことができる。読み書き、和歌や慣用句の穴埋め等々、知っているようで知らない日本語の奥深さと自…

五十嵐敬喜,小川明雄「『都市再生』を問う」岩波新書(2003年) ISBN:4004308321

バブル崩壊後も建築基準法などが緩和されて超高層ビルの建設が促進されたことにより、住民の生活基盤が破壊されていく様子を詳細に追っている。政官財の癒着構造がもたらす行政の無計画さに憤りを感じるとともに、土地所有者を適切に律することのできない市…

植島啓司「『頭がよい』ってなんだろう」集英社新書(2003年) ISBN:4087202070

頭がよいとは知能が高いことと同義ではない。著者は様々なクイズを題材に、思考の多様性・柔軟性こそが重要だと説いている。多湖輝「頭の体操」に苦悩した日々のことが懐かしく思い出された。 「知能年齢÷実年齢×100」で求められる知能指数だが、15歳以上だ…

池内紀「ニッポン発見記」講談社現代新書(2004年) ISBN:4061497200

北から南まで17の町を訪れ、古き良きニッポンとの出会いを綴った見聞録。その町のたたずまいから歴史と伝統、そこに暮らす人々の息づかいまでが感じられる文章で、読者も机上旅行を楽しめる。私の場合、鉄道の通わぬ地にはなかなか足が向かなかったが、開発…

濱田篤郎「旅と病の三千年史」文春新書(2002年) ISBN:4166602837

歴史上人々の交流が深まるにつれて、疫病の流行域が拡大したり、風土病に遠隔地で感染したりすることが急増した。また、長期の船旅で壊血病などにかかることもあった。こうした疾病に対し、「旅行医学」=海外旅行者のための医学が発達したという。今日では…

小野田襄二「やりなおし基礎数学」ちくま新書(2003年) ISBN:4480061002

0、素数、分数、方程式に関数……小学校から中学校で学ぶ算数・数学の基礎的概念を、暗記するのではなく自ら理論を考えることにより、理解を深めようという学習書。問答形式の構成により、読者はじっくりと考えながら読み進めることができる。 分数のわり算の…

来村多加史「キトラ古墳は語る」生活人新書(2005年) ISBN:4140881488

キトラ古墳の壁画が意味するものを、おもに中国の遺跡や史料の研究成果によって読み解いている。一つひとつの説明が丁寧なので素人にも理解しやすいが、基礎的知識をコラムとして各章末に分散させた構成だけは読みづらく感じた。 昨今の新聞報道によると、管…

杉田昭栄「カラス なぜ遊ぶ」集英社新書(2004年) ISBN:4087202348

身近にいるのに「ゴミをあさる」「子供を襲う」「黒くて怖い」など、とかく嫌われがちのカラス。さまざまな実験や解剖をもとに、彼らが他の鳥類に比べて高い能力を持っていることを明らかにしている。カラスがもっと別の体色をしていれば、また別の評価も得…

市川拓司「いま、会いにゆきます」小学館(2003年) ISBN:409386117X

あまり小説は読まないワタクシだが、書店でたまたま手に取り、一気に読み進んでしまった(実は本書を初めて読んだのは書店での立ち読みでした。今回は2度目の通読なり)。雨の季節に帰ってきた、亡くなったはずの妻。その謎解きもなかなか見事だが、なんと…

谷口研語「地形で読みとく合戦史」PHP新書(2003年) ISBN:4569633439

古代から近世まで、日本国内で行われた合戦を地形により類型化し、その地における双方の戦略から戦闘の結末までをたどった本。大軍が衝突する「原」、防衛線の争いとなる「川」、奇襲攻撃の「狭間」など、なるほど地の利を得た側が勝利した理由がよく分かる。…

森口満「ぼくらの昆虫記」講談社現代新書(1998年) ISBN:4061494058

セミやミノムシ、テントウムシにゴキブリなど、身近にいる昆虫を観察し、生態を探る楽しさを実録した昆虫とのつき合い方入門書である。捕虫網と虫かごを携えて野山を歩き、ファーブル昆虫記を読みふけった小学生の頃を懐かしく思い出した。