三杉隆敏「真贋ものがたり」岩波新書(1996年) ISBN:4004304512

 中国陶磁器研究家である著者が「真贋」にまつわる人間と社会の諸様相をまとめた一冊。読み進むうちに、美術とのつき合い方に関する心得というものが浮かび上がってくる。末章に書かれた「それではいったい何をもって『美』と呼ぶのか、何をもって人間の芸術性を問うのか。(中略)やはり『アンサー・イズ・ノット・オンリー・ワン』ということしか今は言えないと考える」(本書P.222)との吐露に、著者の美に対する真摯な欲求と敬愛の念を感じた。