平田オリザ「芸術立国論」集英社新書(2001年) ISBN:4087201120

 工業立国、技術立国の時代は終わった。これからは芸術立国の時代である……そう唱える著者による、芸術文化支援のための方策あれこれ。各地の箱もの行政の陰にあって、地域の芸術文化行政は貧困である。中でも音楽・美術に比べ演劇の地位が低いことは間違いなさそう。著者は憲法第25条の「文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とする規定に基づいて『芸術保険制度』なるものを提唱する。ワタクシのようにライブに行く機会の多い人間としてはそんな制度があったら大歓迎なのだが…。それはさておき、著者は「芸術の公共性」を再三にわたり主張する。確かに精神の健康において芸術がよい影響を及ぼすことは容易に想像がつく。拝金主義のまかり通る今こそ、芸術の価値をより高めていく必要があろう。