2006-01-01から1年間の記事一覧

山田真哉「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」光文社新書(2005年) ISBN:4334032915

書名の問題のほか、住宅街の真ん中にある高級フランス料理店や在庫をたくさん抱えた自然食品の店など、身近にある一見不思議な経営形態を題材に、会計的な考え方の基礎を易しく説いた本。発展的学習につながるよう、用語集や格言などがまとめられているのも…

青木人志「『大岡裁き』の法意識」光文社新書(2005年) ISBN:4334033008

日本人の法意識はどのように形成され、如何なる変遷をたどったのか。江戸のお白洲から明治以降の裁判所へと切り替わる制度面を踏まえ、フランスやドイツ法の流れを強く受けた明治時代から戦後のアメリカ法の影響までを明らかにしている。不平等条約改正のた…

鬼頭宏「環境先進国江戸」PHP新書(2002年) ISBN:4569621473

環境経済史の視点から、江戸時代の自然環境と経済活動、人口動態の関わりなどについて述べている。鎖国政策の下、国内での自給自足生活を発達させ、約四千万人もの人口を支えてきた当時の社会経済制度には様々な矛盾やひずみもあっただろうが、エネルギーの…

筑紫哲也「スローライフ」岩波新書(2006年) ISBN:4004310105

「緩急自在」をキーワードに、速度重視の開発一辺倒ではなく、自然や周囲の人間関係をも含めた環境との調和を図り、より豊かな生活をおくろうと勧める本。食事・旅・学習・長寿社会など、ジャーナリストとして長年見識を積んできた著者ならではの知見が並ん…

小野田博一「論理力を強くする」講談社ブルーバックス(2006年) ISBN:4062575159

設問形式をとっていて読み進むのは容易だが、内容そのものを身につけるのは難しい。大学の一般教養で学んだ「論理学」という予備知識がなかったら、何のことやらさっぱり分からなかったかもしれません。

松本一男「早わかり[三国志]の常識100」日文新書(2002年) ISBN:4537251034

三国志に出てくる人物や出来事を100項目にまとめた一冊。三国志(演義)そのものは面白いのに本書はイマイチ読みづらかった。地図の出来が良くないことと、重複する項目・内容の整理がなされていないからだろうか。

高田里惠子「グロテスクな教養」ちくま新書(2005年) ISBN:4480062394

20世紀を通じての日本「教養主義論」論。「教養」の価値が尊ばれた時代からその輝きを失うまでを文献から丹念にたどり、今現在「教養」をどう捉えるべきかを考えさせてくれる。 教養なき人に品格を求めるのはどだい無理な相談なのだろうか。本書を電車内で読…

関谷透「『うつ』かなと思ったら読む本」日文新書(2002年) ISBN:4537250941

本書が読者層として狙っているのは軽症うつの中でもさらに軽度の「マイルドうつ」といった範疇に入る人のようで、入門書としてはまずまず十分な内容であろう。 題名に惹かれた訳でもないが、何となく手にとって読んでみた。そういうこともたまにはあります。

俣野敏子「そば学大全」平凡社新書(2002年) ISBN:4582851525

植物としての「ソバ」から食物としての「そば」へと研究を続ける著者による蕎麦あれこれ。そばが江戸の街で受け入れられていく歴史を語った後、一転して世界のソバ料理などが紹介されている。麺としてではないにせよ、蕎麦掻きのような形態で各国でもソバが…

黒川伊保子「怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか」新潮新書(2004年) ISBN:4106100789

言葉に対する印象を作り上げる音感に焦点をあてた本。「ことばの音を見、聞き、発しながら、私たちは、Sに爽やかさを感じ、Tに確かさを感じ、Hで開放され、Nで慰撫され、Kで鼓舞される」(同書P170)などとまとめられると「なるほどそうかなぁ」とも感…

三浦展 編著「脱ファスト風土宣言」洋泉社新書(2006年) ISBN:4862480209

日本の都市が郊外のバイパス沿いに設けられたショッピングモールに侵食されて空洞化し、地域の活力を失っていくという「ファスト風土」現象。その流れを変えようとする建築家など8名による脱「ファスト風土」の取り組みを紹介している。とはいえ、結局は経…

島泰三「安田講堂1968-1969」中公新書(2005年) ISBN:4121018214

1968年、ベトナム反戦の気運を背景に、医学部改革を契機として始まった東京大学の学園闘争。翌年になって闘争は拡大し、安田講堂攻防戦へと続いていった。1969年1月19日、同講堂内で逮捕された著者による、内側から見た東大闘争の実録記である。全共闘の成り…

伏木亨「人間は脳で食べている」ちくま新書(2005年) ISBN:4480062734

日々食事をとる上で欠かすことのできない「おいしさ」という要素。それを感じ取る機能を生理的要素や情報など多面的にとらえ、脳が支配する食生活の仕組みを説いている。自分の味覚よりも「情報」により美味しさを感じる危うさは、古来から馴染んできた伝統…

小笠原喜康「議論のウソ」講談社現代新書(2005年) ISBN:4061498061

統計・権威・時間経過・ムード先行という4つの要素により、まことしやかに唱えられる少年犯罪増加・ゲーム脳・ケータイの電源断・ゆとり教育にまつわる主張の危うさを指摘し、ものごとの本質を見る目を養う数々の方法論を提示している。 著者の論に賛同した…

清水義範「飛びすぎる教室」講談社(2003年) ISBN:4062121646

小学校で習った教科に関わる、けれど学校では滅多に学ぶことのなかった雑学的知識ネタを取り上げた連載エッセイの第7弾。今作では科目の枠を超えて、歴史から料理、聖書にお墓、果ては宇宙論まで展開していく著者の力量は素晴らしい。例によって微妙に(い…

養老孟司「こまった人」中公新書(2005年) ISBN:4121018192

中央公論誌に連載された随筆集の第二弾。主に時事問題を題材に、著者ならではの科学的・論理的視点から事象の本質を分析している。本書掲載の文章はちょうど『バカの壁』が話題の書となった時期に符合し、そうした世間の「評価」を多少なりとも意識している…

菅原健介「羞恥心はどこへ消えた?」光文社新書(2005年) ISBN:433403330X

羞恥心は何のためにあるのか、そして今、羞恥心はどうなってしまったのか。著者の社会心理学的分析によれば、他者の視線を気にするのは自分と関わりのある「セケン」において、である。そしてその「セケン」の範囲が、いわゆる世間という広がりを持ったもの…

西江雅之「『ことば』の課外授業」洋泉社新書(2003年) ISBN:4896917197

言語学者による「ことば」にまつわるあれこれ。「言語」と一括りにしても、母語と母国語の問題や外国語教育など、その概念は政治の影響を強く受けていると指摘する。かと思えば、動物には言葉が分かるのかなど、言語の本質を掘り下げてヒトの特殊性を論じる…

内井惣七「空間の謎・時間の謎」中公新書(2006年) ISBN:412101829X

ニュートンとライプニッツの論争を端緒に、相対性理論やビックバン、量子宇宙論までを哲学と物理学を融合した観点で論じているが、正直なところワタクシの理解の及ばない世界であった。無念(苦笑)。

萩谷雅和ほか「あなたを護る反論術」生活人新書(2004年) ISBN:4140881186

日常生活や仕事など様々な場面において遭遇する意にそぐわぬ出来事に対し、具体的な反論事例とそれに対する反応を予測して、望ましい結果を得るためにはどう反論していくのがよいのかを考察した本。弁護士3人による共著だが、法律論的反論はほとんど登場し…

林幸司「ドキュメント精神鑑定」洋泉社新書(2006年) ISBN:486248008X

医療刑務所で13年あまり勤務するなど精神障害受刑者の診療と精神鑑定の最前線に長く携わった著者が明らかにする精神鑑定の実態。多数盛り込まれた実例には専門的ながら適切な説明が付され、門外漢にも理解しやすくまとめてくれている。常人の理解を超える言…

武内孝夫「こんにゃくの中の日本史」講談社現代新書(2006年) ISBN:4061498339

江戸時代末期から換金性作物として急速に発展したコンニャク作り。その生産量増大・流通経路拡大の事情をたどり、コンニャクがいかに日本に根付いていったかを明らかにしている。またその過程で、軍事目的という意外な利用法があったことにも触れている。こ…

丸田隆「裁判員制度」平凡社新書(2004年) ISBN:4582852327

2009年から導入される裁判員制度とはどのようなものなのか。諸外国の類似制度や今回の導入に至る経緯もふまえつつ具体的制度を紹介し、その問題点をも指摘している。日本の国民性にそぐわぬという理由で葬られた陪審制度であるが、著者によると陪審制こそが…

茂木仁史「入門日本の太鼓」平凡社新書(2003年) ISBN:4582851770

日本の太鼓の構造や打法を紹介し、風俗習慣や伝統芸能との関わり、演奏の最新事情にいたるまで幅広く紹介している。写真がほどよく盛り込まれているのも見やすくてよろしい。 腹に響く太鼓の音が楽しくて盆踊りの櫓を見上げていた頃が懐かしく思い出される。

木村浩「情報デザイン入門」ちくま新書(2002年) ISBN:4480059709

情報デザインとは「人と物(環境)と情報のコミュニケーションをはかるデザイン」のこと。筆記文字から活字、そしてWebへと道具は変化し、伝える事の重要性はさらに増している。いかに正確に、わかりやすく情報を伝達していくかを考察した一冊である。著者は…

安部司「食品の裏側」東洋経済新報社(2005年) ISBN:4492222669

食品添加物業界で長年働いた著者による警告の書。さまざまな事例を挙げ、身近な加工食品にいかに多種多量の添加物が用いられているかを指摘する。本書には化学物質の名称こそ出てくるものの、その害毒については一切触れられていない。脅かすだけ脅して後の…

中谷和夫「とりあえずビール やっぱりビール!」日文新書(2003年) ISBN:453725145X

歴史、種類、製造法、美味しい飲み方、そして健康法に至るまで、S社でビール造りに携わる著者による「ビール大全」である。各項目ともわかりやすく、読み進むうちにビールの何たるかを理解できた。 私は「ビール=麦100%」主義者。ドイツのビール純粋令を…

矢幡洋「とにかく目立ちたがる人たち」平凡社新書(2006年) ISBN:4582853064

芸人、政治家など、若者に限らず目立つことを良しとする人間が増えている。著者はそれを演技性性格者(ヒストリオニクス)と自己愛性性格者(ナルシスト)とに分け、その思考形態を分析して如何なる理由により彼らが「目立ち」の行動をとるのか、そして彼ら…

吉田新一郎「『学び』で組織は成長する」光文社新書(2006年) ISBN:4334033393

一人で、二人で、あるいは組織において、「学び」により自己を高めていく22の方法を紹介した本。通読して得た結論は『学ぶ意欲のあるものは伸びる可能性を持っている』という至極当然のものでした。

五十嵐太郎「過防備都市」中公新書ラクレ(2004年) ISBN:4121501403

犯罪被害への不安が高まる日本の都市。住民や学校は警察に頼るばかりでなく自衛策をとるようになってきた。著者は建築の専門家として「過防備」化する都市の生態を多角的に分析している。その視線は閉ざされた構造や監視カメラなどハードウェア偏重の思想に…