伏木亨「人間は脳で食べている」ちくま新書(2005年) ISBN:4480062734

 日々食事をとる上で欠かすことのできない「おいしさ」という要素。それを感じ取る機能を生理的要素や情報など多面的にとらえ、脳が支配する食生活の仕組みを説いている。自分の味覚よりも「情報」により美味しさを感じる危うさは、古来から馴染んできた伝統の味を忘れてしまい、将来の食の安全をも脅かすものになりかねない。問答風の記述でとても読みやすいが、著者が案じている問題はかなり高度で重要なものである。
 たかがラーメン屋に長時間行列をしてみたり、「激辛」を珍重する嗜好なども、食いっぱぐれる心配がないからこその出来事なのでしょうな。飽食のニッポンはどこへ行く。やれやれ。