島泰三「安田講堂1968-1969」中公新書(2005年) ISBN:4121018214

 1968年、ベトナム反戦の気運を背景に、医学部改革を契機として始まった東京大学の学園闘争。翌年になって闘争は拡大し、安田講堂攻防戦へと続いていった。1969年1月19日、同講堂内で逮捕された著者による、内側から見た東大闘争の実録記である。全共闘の成り立ちと推移、「代々木」などの妨害活動、そして闘争が未完成のまま終わってしまったことの今日的意義など、とても読み応えがあった。歴史に「もし」はあり得ないのだが、妨害活動がなく闘争が完遂されていたら、日本社会も大きく違っていたことだろうに…。
 私が卒業した大学でも学園闘争はあり、第二学生会館などは闘争当時のまま閉鎖されていた。「歴史」にしてしまうには早すぎるのかもしれない。