五十嵐太郎「過防備都市」中公新書ラクレ(2004年) ISBN:4121501403

 犯罪被害への不安が高まる日本の都市。住民や学校は警察に頼るばかりでなく自衛策をとるようになってきた。著者は建築の専門家として「過防備」化する都市の生態を多角的に分析している。その視線は閉ざされた構造や監視カメラなどハードウェア偏重の思想に対しては冷ややかで、地域の共同体を活用・活性化する方法などに重きを置くべきだと考えているようだ。
 本書末で著者が提示した「セキュリティが絶対に必要なインフラなのか」との問いの意味は重い。被害のツケを他に回すのではなく、社会構造の矛盾を無くすことにより犯罪を抑止していく、それこそが究極のセキュリティであるという著者の指摘は当を得たものだと思う。