養老孟司「こまった人」中公新書(2005年) ISBN:4121018192

 中央公論誌に連載された随筆集の第二弾。主に時事問題を題材に、著者ならではの科学的・論理的視点から事象の本質を分析している。本書掲載の文章はちょうど『バカの壁』が話題の書となった時期に符合し、そうした世間の「評価」を多少なりとも意識しているのかと思いきや、そうした外部の声には頓着していないのが清々しい。各論部分では異を唱えたいところもあるが、著者の主張にはうなずく部分が多かった。随筆でありながらキーワード索引が付いているのも行き届いた配慮である。
 書名は「歳をとってボケている」と卑下している(実はソクラテスばりに無知の知を装っている?)自身のことではなく、政治家のことなのでしょうな。