菅原健介「羞恥心はどこへ消えた?」光文社新書(2005年) ISBN:433403330X

 羞恥心は何のためにあるのか、そして今、羞恥心はどうなってしまったのか。著者の社会心理学的分析によれば、他者の視線を気にするのは自分と関わりのある「セケン」において、である。そしてその「セケン」の範囲が、いわゆる世間という広がりを持ったものから極めて矮小化された人間関係へと変節してしまったのだという。「羞恥心の機能によって、人類は自己を他者から受け入れてもらえる存在に保ち、社会の秩序は維持されてきた。(中略)しかし、今、社会の広い範囲でこの羞恥心が働かない。たとえ地面に座らなくても、ジベタリアン的な心性は日本人の心の中で拡大していると思われる」(本書P184)との総括に尽きると思う。
 人目をはばからず奔放に振る舞うと他人や社会や環境に対して迷惑をかけることになる。そんな事実に皆が気づけばよいのだが。