青木人志「『大岡裁き』の法意識」光文社新書(2005年) ISBN:4334033008

 日本人の法意識はどのように形成され、如何なる変遷をたどったのか。江戸のお白洲から明治以降の裁判所へと切り替わる制度面を踏まえ、フランスやドイツ法の流れを強く受けた明治時代から戦後のアメリカ法の影響までを明らかにしている。不平等条約改正のために欧米法に準拠した法体系を整備したものの、大岡政談に見られるような「情をもって解決すべし」とする心理はごく最近まで根源的な部分に存在したと思う。尤も今日の個人至上主義(というより「自分勝手主義」とでも言う方がしっくりくる)の世の中では、法という枷にがんじがらめにされなければ秩序は保たれないのかもしれない。裁判員制度導入、果たして大丈夫なのだろうか…。