原田泰「デフレはなぜ怖いのか」文春新書(2004年) ISBN:4166604074

 相変わらず続く経済状況の低迷はデフレがもたらしたものであり、そのデフレの元凶は構造的なものではなくマネーサプライの縮小にある……。デフレの仕組みと対処法について、経済理論と過去の分析をもとに明快に解き明かしてくれる本。著者によれば、デフレの解消は金融緩和政策で可能であるにもかかわらず「抵抗勢力」がそれを阻んでいるという。近視眼的に見れば物価の下落は可処分所得の増大と等価であるようにも思えるが、中長期的観点からすると生産と雇用の停滞が将来の活力・競争力を削ぎ落とすことになるのは想像がつく。「デフレ脱却こそが最大の構造改革である」(本書P109)という著者の指摘に強い説得力を感じた。
 とはいえ、「インフレターゲット論」の正当性は分かるものの、ワタクシの世代には狂乱物価やバブルの経験がトラウマ的に残っている。果たして制御は可能なのだろうか。