森真一「日本はなぜ諍いの多い国になったのか」中公新書ラクレ(2005年) ISBN:4121501845

 荒れる成人式など苛々した精神状態の反映と思われる事象が多発する原因について、著者は「期待の分散」「不安定化している集団形成」「キャラ的人間関係」「自己肯定欲望」など、いろいろな角度からの分析を行っている。この類の本を読むとワタクシは大抵「なるほどなぁ」と頷いてしまうのだが、本書については馴染めない論理展開がたくさんあって、素直に納得できる部分は少なかった。結局、著者が引用として紹介している「欲求・願望というのは神聖なものである」という「聖なる欲望」の顕在化で全ては説明ができてしまうように思える。そして、我慢を美徳とする世代とのせめぎ合いが「諍い」として現れてくるのだろう。
 皆が自分の欲望に最高価値を置くような社会は住みにくいことだろう。何とかしなくては。