かたき討ち/氏家幹人

かたき討ち―復讐の作法 (中公新書)

かたき討ち―復讐の作法 (中公新書)

 親族または主君が殺された恨みを自らの手で晴らそうとするかたき討ち。時代劇ではお馴染みであるが、さてその実態はどうだったのか。法的裏付けや人々の評判も併せ、多くの史料を基に考察した本である。(戦国時代の余韻を残す江戸時代初期においては特に)巷間囁かれるが如き禁欲無私な「武士道」とは全く異なっていて、生き残るための武士の心得というものが見え隠れして興味深い。また戦国末期の死生観に裏付けられたかたき討ちが次第に変質し娯楽化していく過程は、現代における戦争観――傍観者的あるいは劇場的とでもいうものか――にも相通じるものがありそうだ。
 現代においては私闘は許されず、かたき討ちは司直の手に委ねられている。そうした現状を顧みるに、死刑制度そのものは決してなくしてはいけないものなのではなかろうか。