ウェブ炎上/荻上チキ

ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性 (ちくま新書)

ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性 (ちくま新書)

 ネット上で時折見られる「炎上」「まつり」という現象。数々の事例を元に「炎上」「まつり」の背景とそれを起こそうとする心理の分析を行い、ネット普及社会における大衆行動のカラクリに迫った一冊である。著者は分析・解釈において、対論についても検討し慎重に留保を付けたり断定を避ける表現を用いている。読んでいて些か煩瑣ではあるが、それだけ議論は深まっているようだ(自らが「炎上」のタネにならぬように、との御配慮かもしれないが)。また、こうした解説書においてはともするとネット社会の負の側面ばかりを強調しすぎるきらいがあるが、本書では「これまで起こってきた現象が、これから(も/は)形を変えて起こり続ける」と位置づけて、読者に冷静な判断と理解を促している。本書が読み解いた2007年時点でのネット文化。これからどのように変容しどのように定着していくかが注目される。
 昨年末、著者もちょっとした騒ぎの当事者になってしまったらしい(http://ime.nu/d.hatena.ne.jp/seijotcp/20071220/p1)。匿名/顕名の問題は古くからあるようだが、情報流通の速度はネットならではのもの。図らずも先のまとめどおりとなってしまったようで。