江戸の妖怪事件簿/田中聡

江戸の妖怪事件簿 (集英社新書)

江戸の妖怪事件簿 (集英社新書)

 江戸時代、狐狸が人々をたぶらかし、魑魅魍魎が跋扈していた。当時の文献をひもといて、妖怪変化を見た人々の心を現代に再構築した本。今の我々の「常識」ではありえないことでも、当時は当たり前に信じられていた。今日万能視されがちな科学もまた、実は同じようなものなのだろう。本書で一部試みられている気象現象や群集心理などという合理的な謎解きが可能なものばかりでなく、本当に怪異としかいいようのない出来事もあった…と考えるゆとりを忘れずにいたいものである。