藤田久一「戦争犯罪とは何か」岩波新書(1995年) ISBN:400430380X

 近代以降、戦争における「違法性」の問題を多角的な視点から捉えた一冊。戦闘での行為に違法性の網をかぶせる試みから平和に対する罪へと、いかなる理論付けにより発展してきたか。そしてその罪を償う主体は国家なのか個人なのか。様々な問題を内包しつつも諸国が国際法を成立させ、国際司法裁判所の制度が練り上げられていく過程は、二度の世界大戦を経験した前世紀の尊い遺産なのだろう。
 上官の命令による将兵の「犯罪」行為の責任は全て個人にある、とする考え方には割り切れないものを感じた。そうしたことのないよう、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」とした日本国憲法の規定をこれからも堅持して行くべきだと思う。