石井和子「平安の気象予報士 紫式部」講談社α新書(2002年) ISBN:406272166X

 源氏物語における季節や天候の描写を丹念に読み解いた著者によると、紫式部は驚くほど正確に気象状況を捉え、登場人物の心理とも連動させているという。物語の記述と実際の気象状況を対比して、物語で描かれた風景…光や風や雲、雨、雪等々…を立体的に感じさせてくれる。
 一千年前の人々は、現代人よりも自然環境に馴染んで日々暮らしていた。わずかな風向きの変化、気温の変動にも敏感に反応していたことだろう。そういう感性をなくさずにいたいものだ。