福島章「犯罪精神医学入門」中公新書(2005年) ISBN:412101796X

「人はなぜ人を殺すのか」。多数の精神鑑定を手がけてきた著者は池田小事件の犯人Tを題材として殺人者の心理を多次元診断する手法を紹介する。そして幾多の殺人犯の精神的な共通性を探り、それを踏まえて著者が提唱する《殺人者精神病》を解説、冒頭の問いに応えている。適宜、術語に関するコラムが挿入され、理解を助けてくれる。
 脳の器質的異常は別にして、「殺人者」の芽は誰にでもあるものなのかも知れない。人としての温かい心こそが、抑止力を持っているのだろう。