内藤高「明治の音」中公新書(2005年) ISBN:4121017919

 幕末から第二次世界大戦前までに、日本にやってきた外国人が聴いた「音」。西洋化の進行に伴って、人の営みに関わる音や日本の音楽などが次第に変質していく様を、モース、ロチ、ハーンといった人々によって記録された著作により追いかけている。聴覚の視覚化という困難な作業(しかも文化的地盤が全く異なる環境において)を行った先哲たちの努力には感服する。が、これらの人々でもセミの鳴き声を騒音と感じる人がいるのはなかなか理解しがたいところである。
 人工的な音はさておき、自然の奏でる音〜特に虫の音など〜を愛する人間でいたいと思う。