三浦展「ファスト風土化する日本」洋泉社新書(2004年) ISBN:4896918479

 以前、中小都市や近郊の農村は大都市に比べ安全だと考えられてきた。しかし今日では、その関係は逆転してしまっている。バイパス道路沿いに大型商業店舗が開店し、全国どこでも画一的な街並みが形成される。多くの通行客が引き寄せられる一方で、旧来の商店街は崩壊している。地域的・人間的つながりを持たない地域社会は、犯罪を抑止する力を殆ど持ち合わせていない。著者によると、こうした「ファスト風土」化した大量消費社会こそが現在の不安定な世相をもたらしているという。多くのデータや現地レポートにより、行き過ぎた商業ベースの開発に警鐘を鳴らしている。
 本書を読んで郊外を自動車で走ってみると、著者の指摘ももっともだと思えてくる。そして地域社会の復権こそが、安心して暮らせる住みよい街作りに欠かせないのだ。