久保田展弘「さまよう死生観 宗教の力」文春新書(2003年) ISBN:4166603698

 「死」をどのように捉えるか。即ちそれは「生」を如何に捉えるかに他ならない。パレスチナで、インドで、日本で、さまざまな宗教や思想と向き合いながら著者は生と死の意味を問い続けている。記憶にない父の死、闘病の果てに迎えた母の最期。身近な死と普遍的な生を重層的に組み合わせ、各宗教の死生観を対比しつつ、読者それぞれが生と死の意味を体得できるよう導いてくれている。
 悠久の時の流れの中では「私」という存在はとても儚いものに過ぎない。輪廻転生があるかどうかはわからないが、また何らかの形でこの宇宙と関わるのだと考える方が、他人にも自然にもやさしく接することができるように思えてならない。