長沼毅「深層水『湧昇』、海を耕す」集英社新(2006年) ISBN:4087203638

 「海洋における食物連鎖」と「海流」という一見つながりのなさそうな2つの要素が、実は人類百億人時代の食料生産を支えるカギとなる……そんな魅力ある話をわかりやすく解説してくれる。ミネラル分をたっぷりと含んだ海洋深層水が深海から湧き上がり(これが「湧昇」という現象である)、表層で太陽光をたっぷりと受けて植物プランクトンが発生する。あとはそれを農耕のように効率よく人間生活に内部化すれば、食料生産の場としての可能性が大きく広がることになるという。自然の湧昇ばかりでなく、これを人工的に起こす考えもあるそうだ。
 開発の限界にまでたどり着いてしまった地表面。あと可能性が残されているのは海洋か地下か宇宙か…。50年後にはどのような変化を見せているのか想像もつきません。