金子雅臣「壊れる男たち」岩波新書 野塩(2006年) ISBN:4004309964

 立場を背景にした性的逸脱=セクシャルハラスメントの被害はあとを絶たない。著者はこれまで「女性問題」として捉えられてきた「セクハラ」を「男性の問題」であると位置づけている。本能的な性衝動を抑えきれない男性は自らの優位性が否定される状況の下で、先行きの不安や閉塞感からの脱出を自己に都合のよい解釈による他者への差別で埋め合わせをしようとしている、というのだ。左様、自己崩壊の危機に直面した男はもはやセクハラに走るか自殺するかのいずれかに追い込まれているのかもしれない。直接他者を傷つけることが少ない分だけ後者の方がマシ、と考えるのは危険だろうか。
 本書に取り上げられた事例は極端なものなのだろうが、常に我が身を振り返って気をつけなければいけないことだろう。