水野肇「クスリ社会を生きる」中公新書(2000年) ISBN:4121015630

 主に医療機関で投与される医薬品を中心に、抗生物質と耐性菌、薬害問題、医薬分業等々製薬会社から患者までの間に存在するクスリにまつわる様々な問題について、一般市民の立場からの視点を提示している。医療機関にかかると3〜7日分の大量の医薬品が処方されるが、複数の治療を受けている場合、薬の相互作用に関しては全てが検証されているわけでもなく、そのリスクは患者側に負わされている。薬剤師の重要性は著者の指摘のとおりだろう。「医者が治すのではなく薬が治す」という状況に対するアンチテーゼとして、漢方を据えているのもわかりやすい。
 本書では製薬会社の合併が避けられないとし、執筆から6年を経た現在では業界再編の動きが続いている。また、薬剤師養成にかかる教育の充実も実行に移された。医療ジャーナリズムの最先端に立って執筆を続けてきた著者ならではの慧眼に敬意を表したい。