親の「ぼけ」に気づいたら/斎藤正彦

親の「ぼけ」に気づいたら (文春新書)

親の「ぼけ」に気づいたら (文春新書)

 アルツハイマーをはじめとする痴呆症に親がかかってしまったら…。本書を読めば、物語と解説、挿話という多重構造の構成によって症状と診断、具体的対応策を知ることができる。「ぼけ老人」という決まり切った先入観とはやや様相を異にした、著者の臨床経験に基づく冷静な描写が現実なのだろう。患者とその家族を見つめる視線はやさしく、時に厳しく、時間軸に沿って痴呆の本人とその家族を巡る状況がどのような変遷をたどるか読者は疑似体験することができる。
 家族として、あるいは患者としていつかは我が身にも訪れるかも知れないその日に備え、少しでも心の準備をしておくべきなのだろう。