宮本武蔵の真実/小島英煕

宮本武蔵の真実 (ちくま新書)

宮本武蔵の真実 (ちくま新書)

 吉川英治の小説や井上雅彦の漫画などで絶大な人気を誇る宮本武蔵。だが、それらの作品はあくまでも虚構であり、各作者の想像の産物であった。好敵手・佐々木小次郎共々文献類を綿密に調査した著者による、宮本武蔵の実像を描いた一冊。文壇における武蔵の評価や市井の人々の印象なども盛り込んで、武蔵人気の秘密が垣間見える構成となっている。
 私の「武蔵」は遠い昔に聴いたNHKラジオドラマ――確か森繁久弥さんの日曜名作座であったかと記憶する――に始まる。武蔵の実像は戦の時代から文の時代へと移り変わる一瞬に咲いたあだ花だったのだろうか。