オトコの進化論/山極寿一

オトコの進化論―男らしさの起源を求めて (ちくま新書)

オトコの進化論―男らしさの起源を求めて (ちくま新書)

 ヒトはいかにして「オス」から「オトコ」に変わったのか。類人猿を中心に霊長類の生態を比較観察し、生物学的存在に過ぎない「オス」が社会的役割を兼ね備えた「オトコ」へと進化する過程を丹念に研究した本。男女の性差だけでなく、人間と動物を区分するものとしての精神面がどのように形成され、この先どう変質していくかも論考していて興味深い。オスとしてのリーダーシップ、性交渉の類型や育児への関与など、ヒトも類人猿との共通性を多数持っているのだ。
 ヒトの進化型が最良のものとは限らないことは、今日起きている様々な事件が傍証している。理性と本能の間で、ヒトはどこに向かおうとしているのだろうか。