女ことばはどこへ消えたか?/小林千草

女ことばはどこへ消えたか? (光文社新書)

女ことばはどこへ消えたか? (光文社新書)

 女性の優美さを示すものの一つであった「女ことば」が滅びようとしている。100年前の漱石の著作、その100年前の「浮世風呂」、さらには室町時代の宮中の女房言葉をたどり、「女ことば」の源泉を探り当てる。その一方で現代の女子大生への調査から彼女たちの言葉の現状と言語意識を浮かび上がらせるという重層的構成の本である。「やさしい心はやさしいことばを生み、やさしいことばはやさしい心を育てる。女ことばの原点はここにある」(本書P.292)というまとめは至言である。美しいことば、それは相手を気遣い思いやる心の発露に他ならないからだ。自分の子どもに向かって「てめぇ」と呼びかけている親の姿を見ると、その子の行く末が案じられてならない。南無三。