国家の品格/藤原正彦

国家の品格 (新潮新書)

国家の品格 (新潮新書)

 第二次大戦の敗戦後、日本国民に植え付けられた「自由」「平等」「民主主義」を至上のものとする理念。近年では「国際化」「グローバリゼーション」の名の下にアメリカ的思想がさらに強化されているが、それらは本当に正しいものなのか。日本をはじめとする世界各国に蔓延する閉塞感の原因がそこにあるのではないか。論理と合理に縛られず、日本人が失いつつある「情緒」と「形」を尊重してこそ、社会の荒廃は食い止められる――
国家の品格」という書名だが、国民一人ひとりの品格が保たれてはじめて国家の品格も成り立ちうるのかもしれない(これは「主権在民」思想に侵された私の妄言か?)。伝統の重みの中に活路は開かれるという見方には一部留保をつけさせてもらえれば賛成である。惻隠の情、自然を愛でる心、祖国愛……こうした心得は今からでも遅くない、全国民が改めて身につけておくべきことなのだ。