食育のススメ/黒岩比佐子

食育のススメ (文春新書)

食育のススメ (文春新書)

 約100年前に著された村井弦斎の小説『食道楽』をテキストに、そこに収められた炊事・栄養・作法等に関する先駆的知見を紹介した一冊。食事が西洋化していく中で、正しい知識を持つことでより豊かな生活を送ることができるよう書かれた啓蒙的小説とのことだが、文学史的な位置づけからはあまり顧みられることがない。単なる蘊蓄話で終わらすのではなく、そこに恋愛的要素を絡めることで読者の関心を惹こうとしたがために「小説」の手法を取ったと考えるとむべなるかな、と思う。とはいえ、「食」にまつわる話題が巷間で上がらない日はない現在から見ると、100年前に「食」の問題を総合的にとらえた先見性は評価されても良いのかもしれない。
 書名は福澤諭吉『学問のすゝめ』のもじりでしょうかねぇ。うむむ。