クライマーズ・ハイ/横山秀夫

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

 1985年8月12日に起きた日航機墜落事故。取材に当たる地元新聞社編集局デスクの一週間は葛藤に満ちたものだった。〆切の都合で活きた記事をボツにし、営業など他部署とのつばぜり合いを行い、社長派と専務派の暗闘に巻き込まれ、大スクープ(になるはずの)記事は僅かに確証が持てずに掲載せず、投稿記事には嵐のような抗議…。信念と使命感に燃えて紙面を作り上げた男の「こころ」が、時折織り込まれる十七年後の親子の挿話とともに読む者へと染みこんでくる。著者は事故当時、実際に新聞記者だったとのこと。どこまでが創作でどこまでが実話かわからないが、テンポの良い展開で緊迫した現場の様子がひしひしと伝わってきた。
 あの事故では高校恩師の奥方が犠牲となりました。ささやかながら縁のある事故です。改めてご冥福をお祈りします。