精神科ER/備瀬哲弘

精神科ER――緊急救命室 (集英社文庫)

精神科ER――緊急救命室 (集英社文庫)

 精神疾患の症状により緊急対応が必要な患者のための「精神科ER」。本書に集められた20ほどのエピソードには、さまざまな人生そのものが凝縮されている。
 「正常」と「異常」の境界線は驚くほど微妙で、その一線を越えてしまうことは誰にでも起こりうる。そんな人たちに救いの手をさしのべること自体はとても尊い行為だと思う。それに従事する医師たちも素晴らしい。しかし、終わりの方で取り上げられた自殺未遂者の話は重い。命は救われても人生そのものを救うことは、医師にはできないのだから…。