なぜ日本人はとりあえず謝るのか/佐藤直樹

欧州に見られる「社会」と「個人」という概念は日本には存在しない。替わりに「世間」がその構成員を束縛し、行動から倫理観念までを規定する。世間の了承を得るために、掟破りをした者は謝罪し世間は赦す。謝罪をしなければ疎外される。こうした考え方を背景に、刑法第39条少年法、起訴便宜主義といった検察・裁判制度も成り立っている――なるほど、契約という明文、或いは神(若しくは権威者)への誓いなどによらずとも、「阿吽の呼吸」「場の空気を読む」同調圧力が働いて、人々は自律的に行動し世の中はうまく回っていたのだ。

権利とその裏側にある義務との均衡が崩れつつある現代、「とりあえず謝る」人は減少しているように思う。悪いところだけ欧米化してもなぁ……。