松村劭「ゲリラの戦争学」文春新書(2002年) ISBN:4166602543

 古代から近年のテロ事件まで、「弱者」の戦争手段たるゲリラ戦争の事例から戦略を分析し、21世紀の戦争の姿を焙り出している。核抑止力の下では、軍事大国の正規軍同士が全面戦争を行うことは考えづらい。現状に不満を持つ勢力が圧倒的な敵の軍事力に対抗するにはゲリラ戦という様態を取るしかないのだろう。これまでの書物では「決戦」を中心に取り上げていたが、本書では「国家の戦争戦略は『決戦と持久戦』の組み合わせの芸術である」という視点に立ち、ゲリラ戦・対ゲリラ戦の戦略・戦術を考察している。
 それにしても「結果論だが、日本は、蒋介石の作戦を何度も妨害して毛沢東を援けていたのだ」(本書P.116)との指摘を読むにつけ、当時の軍部の無策ぶりを嘆きたくなってしまう。