米山公啓「医学は科学ではない」ちくま新書(2005年) ISBN:4480062785

 衝撃的な書名だが、著者は様々な角度からそれが事実であることを明らかにしている。「平均的医療」と個々の症例との食い違い、過去の経験則に基づく投薬などの治療方針の決定など、再現不能である点は確かに「科学的」ではないかもしれない。また、健康食品や民間療法に頼ってしまう患者側の意識にも光を当て、医療と健康維持のあり方についても論じている。
 「医学が科学であるというのは、作り上げた幻想であり、そのルールを私たちが信じているだけなのだ。 しかし、医学が幻想のルールだとしても、新しい価値観で医学を見直し、新しい幻想のルールを作るべき時なのではないだろうか。」(P.203)との結語は重みがある。