犯罪不安社会/浜井浩一、芹沢一也

犯罪不安社会 誰もが「不審者」? (光文社新書)

犯罪不安社会 誰もが「不審者」? (光文社新書)

 少年や外国人の犯罪、凶悪犯罪が増加し、日本の治安は悪化している。そのために近隣で連帯して不審者を監視し、犯罪者に対しては厳罰をもって臨むべきである……巷で信じられている効した状況認識は果たして正しいものなのか。著者らは統計を分析し、また世論の変遷を読み解いて、治安は決して悪化していないという。そして犯罪を見る視点が加害者の側から被害者の側へと移動し、マスコミの一面的な報道により治安悪化の神話が作られ強化されているとしている。最後は社会生活からあぶれた弱者が犯罪者となって刑務所に収容され、どうにもならない事態になっているという報告により締めくくられている。
 著者らの主張はおそらく正しい。マスコミの煽りにのせられた哀れな大衆は知らず知らずのうちに、誰もが住みにくい世の中を作るよう仕向けられてしまったのだ。冷静になって、今一度治安の問題を考え直す必要があるだろう。