市民のための裁判入門/井上薫

市民のための裁判入門 (PHP新書)

市民のための裁判入門 (PHP新書)

 元判事による裁判の指南書。あまり知られていない司法の制度や組織、手続き、運用などを明快に解説してくれている。裁判そのものばかりでなく、司法行政についても批判的立場から丁寧な説明がなされていてありがたい。以前「司法のしゃべりすぎ」で蛇足判決を厳しく批判した著者ならではの、「裁判所の権限」に対する制限的な解釈や、法令ではない『判例』に拘束されすぎる現状を指弾する視点など、裁判の民主的コントロールという観点からも広く国民が認識し議論を深めるべきことだと感じた。紙幅の関係からか裁判員制度については問題点の指摘に留まっているが、これらも制度の運用開始までに見直すべき点が多々ありそうだ。
 久々に裁判の傍聴へ行ってみたくなりました。