道路整備事業の大罪/服部圭郎

道路整備事業の大罪 ~道路は地方を救えない (新書y)

道路整備事業の大罪 ~道路は地方を救えない (新書y)

「地方と中央の格差解消」「渋滞の緩和」「地域交流の活性化」はたまた「命の道路」…さまざまな理由づけをされて建設され続ける日本の道路。しかしそれは本当に必要なのか。著者は主に、地方に住む人々の社会環境・経済環境に与える影響という視点から、無駄な道路建設を糾弾する。
新しい道路がもたらした地域コミュニティの崩壊・中小商業者の衰退・交通弱者の増加や、逆に既存高速道路を撤去して新たな街作りに成功した京城ポートランドなど、著者が示す国内外各地の事例は強い説得力を持っている。

本書内でも紹介されている「鞆の浦」は昨年ワタクシも訪問した。道が狭いが故に自動車の流入が制限され、旧来の街並みが残されている。また、福山駅までバスが15分間隔で運行されるなど、公共交通機関が安定して維持されていた。街の景観ばかりでなく、街そのものの価値をも台無しにしてしまうバイパス道の建設はすべきでないと思う。

道路特定財源は廃止されたものの、実態は明らかではない。
誰のための道路建設なのか。それは工事関係者のためばかりでなく、日本の基幹産業たる自動車を売りまくるための方策なのかもしれない…などと勘繰りたくなる今日この頃。